共同事業と民事信託

信託とは何か?

信託とは、委託者の財産(信託財産)を、一定の目的に従って財産の管理または処分及びその他の目的達成のために必要な行為とされています(信託法2条)。
信託財産は原則として委託者、受益者及び受託者の固有の債務に基づく強制執行、仮差押、仮処分等はできません(信託法23条1項)。


受託者の要件

信託業法に基づくのが営業信託(信託銀行等)、信託法に基づくのが民事信託(非営業信託)です。よって、未成年者、成年被後見人、被補佐人でなければ個人も法人も受託者となれます(信託法7条)。(注)信託法の改正により破産者も可能になりました。


共同事業(ビル・賃貸マンション)の場合

土地をそれぞれ分有で所有する地権者が、土地を有効利用するため共同ビルを建築することになった場合、地権者の一人でもデフォルトし、その地権者の土地が差し押さえられると工事全体がストップする可能性があります。信託登記を設定することによってそれを回避することができます。銀行は当該地権者の受益権を差し押さえることによって債権を保全することができます。


受益権とは

信託を設定すると受益権が発生します。
受益権とは、当該不動産より発生する利益を享受しうる権利です。
将来完成する建物に対する権利も受益権に包含されています。


駅前再開発と築40年以上のマンションの建て替え

現在、築40年以上のマンションが全国に13万棟以上あるといわれています。
当然、建て替えが必要になってきます。 人数が多いほど、「隣の人は大丈夫?借金はないの」と心配になってきます。そういう意味でも、共同開発、建て替えの場合には信託法はもっとも安心して工事ができる手法です。
平成14年に「マンションの建て替えの円滑化等に関する法律」が施工されました。手法はほとんど再開発法によった法律ですが、目玉は「建て替え組合法人」の設立です。マンションの解体と同時に管理組合がなくなるので、建て替え資金の受け皿機関として当該法人が使われます。また、地権者も多数の場合円滑に工事を進めるためにも、信託の網を掛けることによって他の地権者の借金、相続等を気にしなくともすむことになります。この場合、受託者は「建て替え組合法人」が有力視されています。


抵当権の抹消、替わり担保としての質権の設定

地権者の土地上に抵当権等の設定登記がされている場合、それを抹消するには完済か別の担保が必要です。土地信託登記をしてもそれに優先する抵当権が設定されているとリスクヘッジにはなりません。信託でおこなう場合は、受益権債権への質権設定も可能。この受益権に対して銀行に質権を設定していただき、同時に抵当権等を抹消します。受益権は建築する建物にも権利が及ぶので、当然に質権の効力も当該建物にも質権の効力が及びます。

強制執行

流質特約による任意処分が一般的と思われますが、強制執行の方法としては、債権執行(民事執行法167条)の方法によります。信託財産の種類によって、転付命令(民事執行法159条)、譲渡命令、売却命令(民事執行法161条)等になります。

ページトップ