従来、租税特別措置法第37条の5項2号の等価交換(立体買換)の場合、金銭の授受なくしていったんデベロッパーへ所有権移転登記(仮登記も同じ)を行い、建物竣工後引き渡し時に精算というのが通常でした。
この場合、地権者の方々からもっともよくあるご質問は、デベロッパーが倒産したら自分の土地はどうなるのか!といったことです。
法律上は、デベロッパーが破産すれば当該土地はいったんは破産財団に入ります(取戻権が行使可能かどうかは別として)。どちらにしても厄介な問題です。
デベロッパーへの所有権移転登記を全く行わないとした場合でも、地権者内の一人でも何らかの原因で物件を差押えられた場合、新築工事はストップしてしまいます。
では、地権者の方々もデベロッパーも安心して共同事業を推進していけるシステムはないのでしょうか!
あります!大正11年に施行された信託法です。(平成18年改正)
今回のケースでご説明いたします。
(注)判例に変更はありませんが、本件のケースの場合、①は部分譲渡方式とします。
委託者(不動産の所有者)、受益者(元の不動産所有者又は相続等で取得した方) 及び受託者(デベロッパーの関係会社)の固有の債務に基づいては、信託財産とされた当該不動産に対しての差押等はできなくなることを意味します。
→よって、安心してマンションの工事が進められるわけです。
前項で説明いたしましたとおり、地権者の一人でも相続または差押え、会社更生法、破産等の申し立てがあった場合、事業がストップする場合があります。特に差押え、会社更生法、破産の場合は建物の工事中であっても以後工事を遂行することが難しくなります。 土地所有者が委託者兼受益者、借地権は受益者となり、第三者を受託者として土地を信託します。(信託の目的は、土地の管理・建物の建設)
信託には、信託銀行が行う商事信託のほか公益信託、農地信託それと民事信託があります。民事信託の受託者の資格に制限はありません(未成年者・成年被後見人・被保佐人は不可)。
土地が信託されると、委託者及び受託者の固有の債務に基づいて当該土地を差し押さえることはできません。また、土地所有者に会社更生法、破産等の申し立てがあっても信託の終了事由には該当しません。相続が発生した場合は受益者の変更登記のみ行います(受託者の単独申請)。
従って、信託登記をすることによって、一人の地権者に前述のような事由が発生した場合でも他の地権者は安心してマンションの工事を委託することができるのです。
これまでの全部売買方式の場合、地権者は建物竣工後に自分の土地を買い戻すのに不動産取得税及び登録免許税を支払わなければなりませんでした。信託方式を採用することによって土地持分が増加する部分のみ登録免許税及び不動産取得税を支払えばよいのです。
かつ、デベロッパーも事業シェア部分だけの免許税ですみます。
土地信託登記をしてもそれに優先する抵当権がついていればリスクヘッジにはならないので地権者の土地上に抵当権等の設定登記がされている場合、それを抹消するには完済か別の担保が必要です。
措置法上の等価交換は、交換差金または少なくとも土地売買代金債権を地権者はデベロッパーに対して有しています。
これらの債権に対して銀行に質権を設定していただき、同時に抵当権等を抹消します。 受益権は、土地のみでなく施設建築物(等価交換の建物)に対しても権利を有しており、質権も当然に施設建築物に効力が及びます。よって、金融機関の担保価値は変わらず、逆に上昇すると考えられます。
必要書類
1.銀行と地権者間に債権債務が存在していることの「確認書」(銀行と地権者)
2.質権設定契約証書 (銀行と地権者)
3.債権証書(デベロッパーから地権者への支払証書)
4.質権設定の通知書(地権者からデベロッパーへ)確定日付つき
5.質権設定の承諾書(デベロッパーから地権者へ)確定日付つき
6.受益権証書の発行及び質権設定(受託者の承諾)確定日付つき
信託財産の引継及び信託抹消の登記
各地権者及びデベロッパーの各事業割合に応じた土地持分にします。
土地の敷地権登記
銀行質権抹消・残債の支払い or 取得マンションへの抵当権設定 デベロッパーエンドへのマンション分譲