都内のマンションの高経年化の実態を見ると、築年数40年以上のマンションが、2008年には5万4千戸、このまま推移すれば2018年には4.5倍の24万5千戸に、2023年には8倍の42万8千戸に到達する見込みであり、マンションの高経年化が加速的に進んでいる状況である。
資料:「住宅・土地統計調査」(総務省)、「住宅着工統計」(国土交通省)
通常は、マンションの建て替えの場合「マンション建替え円滑化法」に基づき補助金をもらい、デベロッパーが参加組合員となって事業資金を出して保留床を売却した資金で立替の事業費をまかなっていました。しかし、参加組合員が参加するほどの保留床がとれないようなマンションがかなりあるそうです。
以上の条件で建替える場合次のような方法が考えられます。
イ.保留床4戸の分譲代金でまかなえる場合。この場合当然借入額も売却価格となります。
現物で売却すると宅建業法に抵触するので、4戸を追加信託して信託受益権で売却します。但し、信託受益権で売却する場合でも金商法上信託受益権の媒介の免許を持っている業者の媒介が必要となります。売却と同時に信託を解除します。既存の担保がある地権者は自分の区分建物に抵当権を設定します。
ロ.保留床4戸の分譲代金でまかなえない場合。
マンションの分譲を止めて保留床を全部1階に持ってきて店舗として賃貸収入から返済します。この場合、建物全部を追加信託と当時に建物にも抵当権を追加設定します。既存借入がある地権者は信託受益権に質権を設定します。同時に当該地権者の区分建物に2番で抵当権を設定。但し債務者は当該地権者となります。
1階の店舗部分の賃料収入によって銀行の借入額が決まります。基本的に全額返済に回せるので賃料収入の40%以上は借入可能だと思います。勿論、住宅ローンではないので親子リレーローンはありませんが、借り主が地権者法人なので30年ローンも可能です(銀行に確認する必要はあります)。
うまくいけば、配当も可能かも知れません。
例 年間賃料収入が1,200万円とした場合。賃料の40%を返済へ回す場合
例 1,200万円×40%×30年=14,400万円(借入可能額)
(注)この場合長期にわたって地権者法人が存続することになるので、毎年の法人住民税(均等割の7万円)と確定申告時に税理士への支払いがあるので、全額を返済に回さないで毎年信託配当金を一部留保し、一定の時期に増資に回す必要があります。勿論、修繕積立金、固定資産税もです。
債務者が受託者である地権者法人なので、その借入の効果は地権者全員の事業シェア割合に及びます。つまり、自己資金があるので自分は借入を希望しなくとも当該地権者の信託勘定にも債務として計上されます。
本来自分の区分建物を受託者から借りると言うことについて、地権者は抵抗を感じるのではという懸念をされるかも知れません。専有部分の信託受益権については、信託契約書上、①「専有部分を排他的に利用・リフォームする権利と敷地利用権」及び②「信託終了時、当該土地建物を受領する権利」とします。従って、権利者法人からの賃借とはならず、第三者へ賃貸することは転貸借とはなりません(利用する権利を直接貸す)。また、将来売却するときも、①と②の「権利」が包含された受益権を売却することになります。但し、受託者である地権者法人のハンコが手続き上必要です。
但し、1階は8人の受益権の準共有なので、例えば地権者Aが店舗の使用を希望する場合、受託者との賃貸借契約となります。賃料の計算上Aの持分相当額が相殺されるだけです。