不動産登記コラム

区分建物の申請人

【問題】新築未登記である分譲マンションの一部を取得したデベロッパーは自己名義で当該住戸の表題登記をすることができるか?
結論:現行法上はできない

Aデベロッパーが100戸のマンションを作って分譲しようとしたところ、財務事情が悪くなり6階から10階の50戸をBデベロッパーに買い取ってもらうことにした。しかし、検査済はA名義ですでにとっているので建築主の変更はできない。Bとしては、全戸A名義で登記された場合のリスク(差押え)を避けたいし、また金融機関も50戸がB名義での表題登記でなければ融資が出ない。となれば、ゼネコンも工事完了引渡もしないことになり堂々巡りとなる。
Bが全戸買い取った場合はどうか?

法務省の昭和58年11月10日付民三6400号通達は、「区分建物の所有権の原始取得者からその所有権を取得した者(転得者)は、区分建物の表示の登記の申請をすることができない」としているが、その理由として旧不動産登記法第93条第3項を根拠としている。

しかし、昭和58年の改正不動産登記法93条3項但し書き(区分建物の転得者の表題登記の禁止)は、平成16年の改正法にはないが同趣旨の条項はあるか?
新旧対照表によると、旧法93条3項は、新法47条1項となっている。新法47条1項は、「区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その取得の日から一か月以内に表題登記の申請をする」となっている。また、同条2項は、「区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人、被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる」としている。

本条第2項は、前述の通達を明文化したものである。
通達では「区分建物の表示の登記をする前に原始取得者が死亡した時は、その相続人から、原始取得者を所有者とする区分建物の表示の登記を申請することができる」としていたが、新法では「一般承継人」となった。本来であれば、「被承継人に代わって一般承継人から表題登記をする」とすべきと考えるが、一般承継人としたことによって、一般承継人に対置するものとして、相続および合併の場合は本人は存在せず、会社分割の場合しか本人は存在しないので、対置するものとして転得者の可能性もあるとも考えられた。しかし、58年通達が改正法の根底にあることを考えると法の趣旨は一般承継人に対置する者としては(一般承継が発生していない場合)「原始取得者」しかいないと解するのが自然である。よって、デベロッパーBは、自己名義で表題登記ができないことになる。

では不動産登記法で言うところの「区分建物」とはなにか?

①不動産登記法2条22号によると「一棟の建物の構造上区分された部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものであって、建物の区分所有等に関する法律第2条第3項に規定する専有部分であるもの」。

②区分所有法第2条3項は「専有部分とは、区分所有権の目的たる建物の部分」となっている。
すなわち「区分建物」とは次の条件を満たすものと解釈できる。

  1. 構造上独立していること。
  2. 一個の所有権の目的として登記上処分可能なこと。

本件の例で、Aが当初から分譲ではなく全戸を賃貸の予定で建物を建て、その後一棟全部をBへ売却。Bは100戸の区分にして分譲することとした場合、AがBへ譲渡した時点の建物は、一棟の建物であるが、Bが区分登記を申請した時点で「区分建物」となる。よって、AからBへの譲渡証明書に基づいてB名義で区分登記を申請すればBは原始取得者ではないので却下となる。

一方、B名義で一棟の表題登記をして同時に全戸を区分建物に変更することも可能である。しかし、それはあまりにも迂遠であり社会経済上の損失でもある。

昭和58年の改正前の不動産登記法時代は、区分建物が売れるごとに一戸一戸エンドユーザー名義で表題登記、所有権保存登記及び土地の持ち分移転登記を行っていた。これでは、全部で何区分建物があるのか全住戸が完売されるまで登記簿上把握できない。そこで、昭和58年の法改正によって原始取得者が全戸の区分建物の表題登記及び敷地権の登記をすることとなった。それは、平成16年の法改正でも47条及び48条に引き継がれている。

何故区分建物に関しては表題登記名義人を原始取得者に限定したのか?
全住戸の表題登記の強制と費用負担を建築確認申請人(原始取得者)とする方がやりやすかったから?

しかし、表題登記義務者を原始取得者に限定にすることによって発生する弊害が多いのが現実である。 バブル崩壊時に、ゼンコンは工事代金をもらえないまま発注主であるデベロッパー名義で建物の表題登記及び所有権の保存登記を行って同時に抵当権の設定あるには差し押えとかなり面倒な手続きをしたのちに第三者へ売却せざるを得なかった。転得者名義で表題登記が可能であれば未登記の状態で金融機関と融資の相談も可能である。

昭和58年の改正が不動産登記簿の見やすさや課税当局の利便性を図ったものであれば転得者に全戸の表題登記を義務化するだけで問題は解決することになる。

本件の場合は、AとBで全戸の表題登記を許すことで解決する。
訊くところによると、本件事例のケースで上申書を添付することによってB名義で表題登記、分譲をしたことがあると聞いています。極めて現実的で妥当な解決方法だと考えます 関係省庁の熟慮をお願いしたい事例である。

【原始取得についての補足】

Bが検査を受ける前に買い取った場合

・確認済証 A名義
・検査済証は便宜的にA名義で取得
・工事完了引渡証明書  A・B(A 50戸 B50戸)名義で発行された場合

建物の新築日は通常検査済証の検査年月日で表示される
検査前のAB間の売買でBが取得するのは、50戸の現物建物ではなく、建物(50戸)の引き渡しを受ける債権ということになる。
検査後に新築建物をA・Bが引き渡し受けた場合はA・Bそれぞれが原始取得者となる。

この場合工事業者のAおよびBに対する工事完了引渡証明書が必要であるが、工事業者もA単独では工事代金が回収できなければ困るので応じると思われる。

及びAB間で検査前に譲渡があったことに関する上申書(印鑑証明書付)

以上の条件がクリアーできれば当初の目的が達成できることになります。

新不動産登記法

第47条  新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。

  1. 区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる。

第48条  区分建物が属する一棟の建物が新築された場合又は表題登記がない建物に接続して区分建物が新築されて一棟の建物となった場合における当該区分建物についての表題登記の申請は、当該新築された一棟の建物又は当該区分建物が属することとなった一棟の建物に属する他の区分建物についての表題登記の申請と併せてしなければならない。

  1. 前項の場合において、当該区分建物の所有者は、他の区分建物の所有者に代わって、当該他の区分建物についての表題登記を申請することができる。
  2. 表題登記がある建物(区分建物を除く。)に接続して区分建物が新築された場合における当該区分建物についての表題登記の申請は、当該表題登記がある建物についての表題部の変更の登記の申請と併せてしなければならない。
  3. 前項の場合において、当該区分建物の所有者は、当該表題登記がある建物の表題部所有者若しくは所有権の登記名義人又はこれらの者の相続人その他の一般承継人に代わって、当該表題登記がある建物についての表題部の変更の登記を申請することができる。

土地の表題登記の申請

第36条  新たに生じた土地又は表題登記がない土地の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。

第74条  所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。

  1. 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
  2. 所有権を有することが確定判決によって確認された者
  3. 収用その他の法律の規定による収用をいう。第百十八条第一項及び第三項から第五項までにおいて同じ。)によって所有権を取得した者
  1. 区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。

旧不動産登記法

第93条  建物ヲ新築シタルトキハ所有者ハ一个月内ニ建物ノ表示ノ登記ヲ申請スルコトヲ要ス

  1. 前項ノ登記ノ申請書ニハ建物ノ図面、各階ノ平面図及ビ申請人ノ所有権ヲ証スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
  2. 第八十条第三項ノ規定ハ第一項ノ登記ノ申請ニ之ヲ準用ス但建物ガ一棟ノ建物ヲ区分シタルモノナルトキハ此限ニ在ラズ

第80条  新ニ土地ヲ生ジタルトキハ所有者ハ一个月内ニ土地ノ表示ノ登記ヲ申請スルコトヲ要ス

  1. 前項ノ登記ノ申請書ニハ地積ノ測量図、土地ノ所在図及ビ申請人ノ所有権ヲ証スル書面ヲ添附スルコトヲ要ス
  2. 所有者ノ変更アリタルトキハ新所有者ハ其変更アリタル日ヨリ一个月内ニ第一項ノ登記ヲ申請スルコトヲ要ス

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条件付事業用定期借地権の仮登記に公正証書の添付義務はあるか

公正証書によらない条件(条件 区画整理法99条2項の使用収益の開始)付事業用定期借地権仮登記の申請は、予約等保全の仮登記でも公正証書によらなければ無効であるとする見解がある。予約等将来の権利の保全の合意は諾成契約と考えるので公正証書の添付義務はないものと考えます。

学説

不動産登記法105条2項の保全の仮登記の場合でも公正証書の作成が必要とする説
1.公正証書を伴わない(事業用定期借地権の)予約は無効であり、公正証書の作成に応じない一方の当事者の契約締結上の過失責任を負うにとどまる(コンメンタール借地借家法第2判184頁 山野目章夫) (私見:過失責任に対する公正証書の作成の訴えをすることになるのか?また条件が整ったときに事業用定期借地権の登記手続きをせよとの訴えは予約が無効である以上訴えの利益はあるのかという疑問が残ります)。

2.登記インターネット113号2009.5.1/1 53頁「登記官の窓」
本書は、「始期付事業用定期借地権の契約を締結した場合であっても、仮登記の申請時点では、既に当該契約は締結されているはずであって…始期の到来という相違点はあるものの、当該設定契約は借地借家法23条3項の適用があり公正証書による契約であることが成立要件」と述べているが、何故公正証書の作成が始期付賃借権仮登記契約の成立要件であるのかの説明がなされていない。

3.借地借家法23条3項の公正証書は、第三者の許可書とは異なり事業用定期借地権の成立を証する原因証書である。公正証書を欠く場合の法的効果を指示していないが、これは、効力要件を定めるものと解すべきである。公正証書によらない事業用定期借地権の設定は、事業用定期借地権としては無効であり、また、公正証書を伴わない(事業用定期借地権の)予約も無効である(コンメンタール借地借家法第2判183頁、184頁、159頁 山野目章夫)とする。しかし、当事者には、始期の到来・条件の成就および請求権の行使までの間は事業用定期借地権の効力を発生させる意思はないし現状も土地を事業に供していない。

4.一方、事業用定期借地権を設定する場合には、通常、当事者間で協議し、具体的な借地条件を定めてあらかじめ合意書を作成するであろうが、かかる書面は、事業用定期借地権の設定の予約契約、または公正証書の作成を停止条件とした事業用定期借地権設定契約と考えてよいであろう(別冊セミナー基本法コンメンタール第2版補訂版借地借家法82頁 澤野順彦)とする考えもあります。また、登記先例解説集(1992.10.1)「借地借家約款の一例について」 (法務省民事局参事官 升田 純)においては、「事業用定期借地権設定契約のための覚書例について」第一条の解説で、「事業用定期借地権は、法律上、借地契約を公正証書によって行うことが要求されており、この合意書は、公正証書作成のための覚書として作成されるものである。」として当事者の事業用定期借地権設定の合意書(予約)としての成立を肯定しています。

私見

始期付・条件付および請求権賃借権契約は諾成契約であり文書の作成は必須要件ではない。当然、公正証書による契約書がなければ事業用定期借地権の効力は発生しないが(借地借家法23条3項)、始期の到来、条件の成就および請求権を行使した時に契約の当事者は本契約を公正証書にしなければ当該事業用定期借地権の効力を発生させることができません。

事業用定期借地権の予定の合意をも公正証書によらなければ無効とする根拠は、予約の意志表示を公正証書に反映させて厳格化を図る趣旨と解しますが、借地借家法23条3項の要求しているのは事業用定期借地権発生の効力要件としてであって、予約の効力要件としてではない。

不動産登記法105条1号の事業用定期借地権の仮登記においては、公正証書は第三者の許可・承諾ではなく契約当事者の意志が公証された登記原因を証する書面としての性質をもち、105条1号仮登記が認められる要件そのものであり、不動産登記法25条9号及び61条によって却下すべきものである(登記研究570平7.7カウンター相談143頁)が、105条2号の権利保全の仮登記の登記原因証明情報も公正証書でなければならないとすべき根拠は借地借家法23条3項から読み取ることは不可能であると考えます。

また、条件の中に「公正証書の作成」を加入すれば予約の保全を公正証書なくして仮登記が可能とする見解もあるが、本来、借地借家法23条3項は事業用定期借地権の効力の発生は公正証書の作成を条件とするものであり当該文言を入れることは当然のことを確認しているに過ぎないものと解します。

条件付事業用定期借地権設定契約の場合は、条件付契約の合意日が登記原因日であり、仮登記の本登記の登記原因日は条件到来後に公正証書を認証した場合は認証した日が原因日となる。ただし、条件到来前に公正証書を作成していた場合は、条件が到来したことを証する書面(登記原因証明情報等)の日付が登記原因日となるものと解します。

以上により、事業用定期借地権の効力が発生していない不動産登記法105条2号の仮登記に公正証書の添付義務はないものとするのが借地借家法23条3項及び不動産登記法105条1号2号の趣旨と解します。

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工場財団はなぜ信託できないのか?

「わかりやすい信託登記の手続」(日本法令)によりますと、「工場財団は不動産とみなされるが(工場抵当法14条1項)、工場財団は、抵当権を設定するために組成されたものであるから、財団そのものは信託できないとされている」と記載されています(同20頁)。

工場抵当法14条2項は「工場財団は所有権及び抵当権以外の権利の目的たることを得ず」としており、受託者が登記原因を「信託」とする所有権を取得することは、なんら同法に抵触するものではないと考えます。委託者は受託者に(信託を登記原因として)所有権を移して工場財団の運用を任せることは、事業の運営一切を託す事業信託と同様優れたシステムと考えます。日本法令の解釈は、信託を抵当権設定と同レベルの制限物件と誤解されたものと考えます。
また、信託財産である不動産および機械器具を工場財団に組成することも可能と解します。「工場財団保存及び信託」として財団及び組成物件に同一の信託目録を添付することになると考えます(組成物件のすべてが同一の所有者たる受託者である)。同時に、組成物件である信託土地建物の登記簿に工場財団に入った旨の登記をすることになります。
登記記載例として次の登記が可能と考えます。

Ⅰ 信託された土地建物および機械器具を工場財団にする所有権保存

登記の目的 所有権保存および信託
申請人(受託者) ABC信託銀行株式会社
添付書類 登記原因証明情報 工場財団目録 工場図面 信託目録
登録免許税 保存分  30,000円  登録免許税法別表一 五(一)
信託分   6,000円  登録免許税法別表一 五(七)を準用
登記記載例 所有権保存
所有者  ○○○○信託銀行株式会社

信託               信託目録第●●号
(注)信託財産の処分による信託ではないので表記のようになると解します。
抵当権設定
登記の目的 抵当権設定
原因 平成●●年●月●日 金銭消費貸借同日設定
債務者 ABC信託銀行株式会社(平成●●年●月●日信託目録第●号の受託者)(注)
抵当権者 □□□□□□銀行株式会社
設定者 受託者  ○○○○信託銀行株式会社
添付書類 ①登記原因証明情報  ②登記識別情報   ③代理権限証書

(注)ABC信託銀行固有の債務ではなく、信託に基づく借入を明示(信託借入れ)
債権者は、受益者を債務者とすると受託者からの信託配当に対しての差し押さえしかできないが、受託者を債務者にすることによって、工場財団からの収益を差し押さえすることができます。
利息は受益者の損金となります。

Ⅱ 工場財団を自己信託する場合

登記の目的 信託財産となった旨の登記及び信託
原因 平成●●年●月●日 自己信託
申請人 (受託者) 株式会社 A
添付書類 ①Aの登記識別情報(又は登記済証) ②登記原因証明情報として公正証書
③Aの印鑑証明書 ④代理権限証書 ⑤信託目録
工場財団の表示  
登録免許税 6,000円  登録免許税法別表一 五(七)を準用
組成物件(土地・建物)の自己信託登記
登記の目的 信託財産となった旨の登記及び信託
原因 平成●●年●月●日 工場財団 自己信託
申請人 (受託者) 株式会社 A
添付書類 ①Aの登記識別情報(又は登記済証) ②登記原因証明情報として公正証書
③Aの印鑑証明書 ④代理権限証書 ⑤信託目録 ⑥工場財団登記簿謄本(添付省略)
登録免許税 変更分 不動産の個数×1,000円 (注)
(注)財産権の移転ではないので登録免許税法7条1項1号の適用なし
信託分 土地1000分の3
    建物1000分の4

Ⅲ 信託目録(工場財団及び組成物件)

(3)受 益 者 変 更
原因 平成●●年●月●日 売買
変更後の事項 受益者  株式会社 B
申請人 受託者 株式会社 A
添付書面 登記原因証明情報  代理権限証書
登録免許税 不動産の個数×1,000円
自己信託と同時に既存債務を信託借入とするための債務引受(新債務者:受託者 A)
登記の目的 ○番抵当権変更
原因 平成●●年●月●日 免責的債務引受
変更後の事項  
債務者 株式会社A(平成●●年●月●日信託目録第●●号の受託者)(注)
(注)A固有の債務ではなく、受益者Bのための信託借り入れであることを明示する。
権利者 ○○○○○銀行
義務者 受託者 株式会社A
添付書類 ①登記原因証明情報 ②受託者Aの登記識別情報
③受託者A及び銀行の代理権限証書
登録免許税 不動産の個数×1,000円

Ⅳ 工場財団を移転信託する場合

登記の目的 所有権移転及び信託
原因 平成●●年●月●日 信託
権利者 株式会社 ○○○信託銀行
義務者 株式会社 A
添付書類 ①Aの登記識別情報(又は登記済証) ②登記原因証明情報
④Aの印鑑証明書 ④代理権限証書 ⑤信託目録
工場財団の表示  
組成物件(土地・建物)の所有権移転・信託
登記の目的 所有権移転及び信託
原因 平成●●年●月●日 工場財団所有権移転及び信託
権利者 株式会社 ○○○信託銀行
義務者 株式会社 A
添付書類 ①Aの登記識別情報(又は登記済証) ②登記原因証明情報
④Aの印鑑証明書 ④代理権限証書  ⑤信託目録
⑥工場財団登記簿謄本(添付省略)
課税価格 金     円
登録免許税 移転分 金     円
信託分 登録免許税法第7条第1項1号により非課税

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都市再開発法に基づく組合財産の差し押さえについて

  1. 都市再開発法87条2項に基づいて建物の所有権移転を受けた組合は、当該建物に抵当権、所有権移転仮登記を設定できるか?
  2. 当該建物を目的として組合固有の債務に基づき差し押さえ登記が可能であるか?

1・2ともにできないものと解する。

理由

既存の建物を都市再開発法87条2項に基づき組合名義とする理由は、建物の解体と計画敷地を違法に占有している者の排除が目的です。
再開発計画敷地内の文化財指定建物は法101条と同時に組合から当初所有者である地権者へ一部増築後戻されます。組合と地権者との関係は信託の関係と極意しています。また、税務上も組合の貸借対照表上に当該建物は計上されません。
法98条は、96条3項の土地等の明け渡しに関して、施工者の請求による行政代執行を規定しており、本来施行者に対して所有権に基づく明け渡し執行を予定していない(東京高裁平成11年7月22日判決例時報1706号38頁は例外)。
すなわち、施工者の建物に対する所有権を前提とした処分を想定していない。例外として、前記東京高裁の判決が、建物明け渡し請求事件で行政の代執行を待たないで組合自らが所有権に基づいて明け渡し請求できると判じしたものである。東京高裁の趣旨は、あくまでも再開発事業のための施設建築物の建築のための明け渡しでありそれ以上のものではない。
つまり、組合に建物が帰属するという趣旨は建物を解体して取り壊すことが目的でありそれ以外に、たとえば建物に抵当権を設定するとか所有権仮登記を設定することは法の趣旨に反するというべきであろう。
組合が地権者から建物の移転を受けて既存建物を取り壊さないで権利変換計画に従って一部増築をして法101条で元の地権者へ返還することは権利変換計画上も明記されており、税務上も組合の資産には計上しない。
よって、本件の場合、地権者と組合との関係は都再法87条2項によって組合へ建物の所有権は移転するが組合を受託者とする信託の関係と考えることができる。
したがって、組合の固有の債務に基づく借入債権債務に基づいて当該地権者の従前資産である建物の差し押さえはできないものと解する。

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